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民法改正(共有物の変更・管理に関する規律の改正)

⑴ 「変更」の意味   民法251条「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることが出来ない。」とあり、共有物の変更を行うときは他の共有者全員の同意が必要とされています。具体的に「変更」とはどのような行為を指すのか? 新民法251条1項では、「変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)」と明示されました(以下、軽微な変更)。 軽微な変更については、新民法252条1項に基づいて、管理と同様に共有者全員の同意ではなく持分価格の過半数によって決定することができることとなります。しかし、「著しい変更」と「軽微な変更」の堺は明確になってなく、今後の判例などで明確になって行くのでしょう。 尚、この改正は令和5年4月1日施行されます。

民法改正(所有者不明土地)

近年、土地の所有者が死亡しても相続登記がされないこと等を原因として、不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず、又は判明しても連絡がつかない所有者不明土地が生じ、その土地の利用等が阻害されるなどの問題が生じている。 政府においては、経済財政運営と改革の基本方針等の累次の政府方針で、民事基本法制の見直しに関しては、令和2年までに必要な制度改正の実現を目指すこととされている。民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明|令和2年1月|法務省民事局参事官室・民事第二課 “

 令和2年度国交省調査によると所有者不明土地の割合は国土の24%とされている。原因としては、相続登記の未了が63%、住所変更登記の未了が33%とされる。

 所有者不明土地とは、不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地、又所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地を言う。

対策として主に次のとおり 

①不動産登記制度の見直し(発生予防)・・・相続登記・住所変更の義務化、簡素化・合理化 (令和6年4月1日施行)*住所変更の義務化は未定

②相続土地国庫帰属法の創設(発生予防)・・・相続により土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けてその土地の所有権を国庫に帰属させることが出来る。(令和5年4月27日施行) 

③土地・建物等の利用に関する民法の規律の見直し(土地利用の円滑化)・・・所有者不明土地管理制度等の創設、共有者が不明な場合の共有物の利用の円滑化、長期間経過後の遺産分割の見直し(令和5年4月1日施行)

遺言書で叶うこと?

遺言には、遺言者の意思を書くのは自由ですが、書いたことがすべて相続人に対して強制力を持つとは限りません。

法定遺言事項(法律的効力が生じる内容)

●相続に関する事項

1,推定相続人の廃除とその取り消し(民893・894②)・・・虐待・重大な侮辱、その他の著しい非行があったとき、家庭裁判所の審判や調停によりその者の相続権をはく奪できる。

2,相続分の指定又は指定の委託(民902①)・・・法定相続分と違った分割割合を指定し、第三者に委託することができる。

3,特別受益者の相続分に関する指定(民③)・・・被相続人から過去に特別な贈与があった場合、その贈与財産を相続財産に加えて割合を計算するが、遺言によって、その持ち戻しを無しにすることができる。

4,遺産分割方法の指定又はその委託(民908前段)・・・現物分割・個別分割(特定財産分割)・換価分割・代償分割などから分割方法を指定できる。

5,配偶者居住権の設定(民1028)・・・被相続人亡きあとも配偶者が安心して自宅に住み続けられるよう居住権が設定できる。

6,遺産分割の禁止(民908後段)・・・早期に遺産分割をすると問題が生じる恐れがある場合、5年を限度に遺産分割を禁止することができる。

7,共同相続人間の担保責任の定め(民914)・・・分割した財産に不足や損害が生じた場合、共同相続人間で担保し合う方法を定めることができる。

8,遺贈の遺留分侵害額負担方法の指定(民1047①)・・・遺留分侵害請求の効果は、原則として目的物全部にその価格に応じて生じますが、遺言者の意思によって負担順序を指定することができます。

●財産処分に関する事項

1,包括遺贈及び特定遺贈(民964)・・・包括(Aには相続財産の1/3、Bには1/7のように割合を決めて)遺贈又は特定(財産を特定して)遺贈することができる。

2,一般財団法人の設立(一般法人152②)・・・故人の趣味(絵画・彫刻等)など著作物又は収集物等で記念館や博物館等を遺言によって設立できる。

3,信託の設定(信託3ニ)・・・いわゆる遺言信託です。例)本人が死んだら長男に相続財産の管理・運用を任せ、運用益で残された妻の世話をせよ。

●身分に関する事項

1,認知(民781③)・・・例)婚外子を自分が亡くなった後に認知する。「妻に婚外子の存在は伏せておきたいが、相続財産は与えたい。」などの理由とか。

2,未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定(民839・848)・・・例)ひとり親が自身が亡くなったときに信頼できる人を後見人としたい場合など。

●遺言執行に関する事項

1,遺言執行者の指定又はその委託(民1006①)

●その他

1,祭祀承継者の指定(民897①ただし書)・・・お墓などの管理者を指定することができる。

2,保険金受取人の指定又は変更(保44①・73①)・・・死亡保険金の受取人は遺言でも指定することができる。

法的効力のない付言事項

付言事項には法的効力はありませんが、遺言内容を補完することが出来ます。遺言者の気持ちを伝えることで、争うことなくスムーズに遺言が実行されるために必要な場合があります。

遺産分割協議のやり直し

遺産分割協議に際し、法定相続分より多くの遺産を相続する代わりに、一定の負担を課したり債務を負ったりすることがあります。

例えば、介護の必要な方の世話をすることを条件としたり、不動産を相続する代わりに被相続人の債務を弁済したりする場合があります。

しかし、その負担や債務について、遺産分割協議後に履行されないことがあり、そのような場合に遺産分割協議を債務不履行で解除できるのか?

裁判判例では、相続人間での債務不履行による解除はできないが、相続人全員の合意による解除は可能だと言っております。

すなわち、全員合意のもと解除し、その後に再分割の協議をすることになります。

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